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わが心の『メトロ食堂街』

地下鉄丸の内線沿線で生まれ育った私にとって、なじみ深い場所がまたひとつ消えてしまった(TT)

新宿西口の半地下にびよーんと根をはって54年になるらしい。

 

スーツ姿のおじさま、オニィサン、オネイサン、そしてデパート巡りのおばさまグループなどなどで、いつも慌ただしくにぎわっていた食堂街。

場所柄、忙しい人のための忙しい食堂街って感じで、のんびりゆっくり食事を楽しむ雰囲気ではなかったけれど。
ざわざわ落ち着かない中にも妙な安定感があって、結構好きな場所だった。
入っている店舗が、ほとんど変わっていないせいだろうか?

てんぷらやさん、おだんごやさん、立ち食い蕎麦屋さん、お肉の万世、高野パーラー…
子供のころ眺めた記憶と、ほとんど配置が変わっていない気がする。
お店を選ぶときって、真剣だから、不思議と記憶しているんだよね。店舗の配置。
どの店も、大抵どの時間帯も混雑しているから、少しでもすいているお店に入ろうって。
入れなかったお店も、仕方なく入ったお店も。大体覚えている。

うん、たしかにそのくらいで。
メトロ食堂街に、たいした思い出はないんだよなぁ。

家族であわただしく食事をした記憶ばかりで、何度も思い出したくなるようなスペシャルな風景(思い出)ではないんだよな。
むしろ、子供心に、「ちぇっ!またメトロ食堂街か…(小田急の上が良かった…TT)」って思ってたわ(ごめんなさーい!)。

でも、なくなると知って、胸騒ぎがしたし、なによりすごく寂しい気持ちになった。
あらためて、子どものころから、当たり前のように、そこにいてくれた場所。
ずっとずっと変らずにそこに居続けてくれた場所を、また見送らなくてはならないんだなぁって。(TT)。
あぁ、長生きの切なさよ(TT)

おもえば昨年、通院していた父と最後に外食をした場所も、メトロ食堂街の店だった。
戦後の食糧難を経験し、食べ物を残すことが大嫌いだった父が、「食いきれないから食ってくれよ」と、半分に切りわけたステーキを自分の皿からわたしの皿に寄越した。

細かく切ったステーキを、震えるフォークにつきさして、あぶなっかしく口に運ぶ父の様子を、見ないふりをして見ていた。

「お父さんと、あと何回こうして外食できるだろう。」

もし、時間をぎゅっと抱きしめられるなら、今そうしてあげたい、と震える父のフォークを見ながら思ったんだった。

ありがとう、メトロ食堂街。

思い出をひとついただきました。

 

営業最終日の今日は、普段より混みあっておりました。
パンの名店「墨絵」さんの前にはとぎれない列。
54年間、お疲れさまでした~~!

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コトニトコ

50代の漫画描くおばさん。いつもご機嫌です!

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